犬の甲状腺機能低下症は、中高齢で生じることの多い、甲状腺ホルモンの低下による病気です。
元気や食欲がなくなる、脱毛や太ってくるといったことで気づかれることが多いです。
この記事では、犬の甲状腺機能低下症について、原因や症状、治療法などをお伝えしています。
「愛犬が甲状腺機能低下症と診断された!」「甲状腺機能低下症ってどんな病気なの?」という場合には、ぜひ参考になさってくださいね。
犬の甲状腺機能低下症とは?原因について
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏に起因する病気です。
甲状腺は、のどのあたりにある小さな臓器で、新陳代謝を活発にする『元気の出るホルモン』とも言われる甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺機能低下症の原因のほとんどは、甲状腺組織が壊されることによる原発性の甲状腺機能低下症です。
主に、免疫介在性のリンパ球性甲状腺炎と、特発性の甲状腺萎縮(原因不明)によって引き起こされます。
遺伝的要因の関与も考えられますが、明らかになっていない部分もあります。
ほかにも、甲状腺の非機能性腫瘍による正常な甲状腺組織の破壊、先天性の甲状腺機能低下症などもあります。
犬の甲状腺機能低下症の症状
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を活性化する作用を持つため、その欠乏によってさまざまな症状が見られます。
犬においては、
- 脱毛
- ラットテイル(ネズミのしっぽのように、毛がなくツルツルとなる)
- 色素沈着
- 角化異常
- 再発性の膿皮症
- 外耳炎
- 元気や食欲がなくなる
- 肥満(食欲がないのに太っている)
- 徐脈
- 悲しげな表情(粘液水腫による)
といったさまざまな症状がみられることが多いです。
全身性の脱毛に加えて、鼻の上が脱毛することで気づかれることもよくあります。
甲状腺機能低下症による脱毛は、細菌感染や真菌感染などの脱毛とは違い、かゆみを伴わないことが特徴です。
また、ふらつきやナックリングが見られることもあり、『変な歩き方をしている』という稟告で来院されることもあります。
『最近、なんとなく以前と違う…』といった分かりにくい症状で発見されることもあります。
寒さに弱くなる、体温低下により、特に冬場に運動不耐性となることも多いです。
犬の甲状腺機能低下症の診断方法
犬の甲状腺機能低下症を診断をするためには、血液検査にて甲状腺ホルモンの測定を行います。
甲状腺ホルモンである、血中のサイロキシン(T₄)および遊離サイロキシン(fT₄)の測定をします。
血液検査では、多くの個体において、高コレステロール血症がみられます。
また、超音波検査によって、甲状腺の異常(萎縮、エコー源性の異常など)の有無も同時に調べます。
診断の際に注意すべき点としては『ユウサイロイドシック症候群』があります。
これは、甲状腺以外の疾患によって、血中の甲状腺ホルモン濃度が低下する病態です。
この場合、真の甲状腺機能低下症ではないために、誤診しないよう注意が必要です。
犬の甲状腺機能低下症の治療法
犬の甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンを補填することで治療します。
レボチロキシンナトリウム水和物20μg/kgを1日2回(動物用製剤の場合には、1日1回)、経口投与で行います。
臨床症状の改善した場合は、1日1回に変更をすることもあります。
治療開始後は、臨床症状の改善と合わせて、血中T₄濃度を測定することでモニタリングを行います。
採血は投薬から4~6時間後に測定することで、血中T₄濃度のピークにあわせることができます。
臨床症状が改善していれば、血中のT₄濃度が多少低かったとしても、投与量を増加する必要はない場合も多いです。
一般的に、治療によって改善がみられるまでの期間は、臨床兆候によって異なります。
すなわち、活動性は通常1週間以内に改善することが多く、高脂血症や貧血は数週間以内に改善すること傾向にあります。
皮膚症状の改善には数カ月を要することが多く、すぐに良化しないことに注意が必要です。
甲状腺腫瘍が原因の甲状腺機能低下症においては、外科的治療や放射線治療、化学療法などが行われることもあります。
これは、腫瘍や転移の状況によって判断されます。
食事に関しては、特に決まりはないですが、脂質の代謝が上手にできないため、なるべく低脂肪の食事を与えるようにしましょう。
また、キャベツやブロッコリーなどの『アブラナ科』に属する野菜はなるべく与えないようにしましょう。
というのも、アブラナ科の植物には『ゴイトロゲン』という成分が含まれており、これは甲状腺ホルモンの分泌を阻害すると言われているからです。
ただ、相当量を食さなければ影響はないと考えられますので、過度に心配する必要はありません。
犬の甲状腺機能低下症の寿命はどれくらい?
犬の甲状腺機能低下症は、適切な診断と治療によって予後が良好な疾患です。
ただし、生涯にわたる投薬が必要となります。
定期健診や血液検査も行うために、ある程度の費用がかかることも予想されます。
また、糖尿病やクッシング症候群といった併発疾患がある場合や、先天性甲状腺機能低下症の場合には、その原因や病態によって予後は様々となります。
犬の甲状腺機能低下症を予防するためには?
犬の甲状腺機能低下症を予防する方法はありません。
そのため、病気の早期発見が重要となります。
一般的に、犬の甲状腺機能低下症は中高齢でなることが多いため、5,6歳を過ぎたら、1年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。
一般的に、甲状腺ホルモンは、外注検査(外の検査センターに検体を提出する)となるため、ルーチンの健康診断項目には含まれていないことが多いです。
どのような項目を検査するかは主治医の先生とご相談の上、決めるようにしましょう。
【まとめ】犬の甲状腺機能低下症の原因や症状、治療法について
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏により、元気や食欲がなくなる、脱毛などの皮膚症状が出る病気です。
血液検査で甲状腺ホルモンの値を測ることで診断ができます。
併発疾患があると、見かけ上甲状腺ホルモンが下がる『ユウサイロイドシック症候群』を引き起こすため、注意が必要です。
甲状腺機能低下症は、治療によって寿命を全うできる病気です。
今一度、愛犬の様子をチェックし、定期的な健康診断を受けるようにしましょう!
犬の甲状腺機能低下症は、中高齢で生じることの多い、甲状腺ホルモンの低下による病気です。
元気や食欲がなくなる、脱毛や太ってくるといったことで気づかれることが多いです。
この記事では、犬の甲状腺機能低下症について、原因や症状、治療法などをお伝えしています。
「愛犬が甲状腺機能低下症と診断された!」「甲状腺機能低下症ってどんな病気なの?」という場合には、ぜひ参考になさってくださいね。
目次
犬の甲状腺機能低下症とは?原因について
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏に起因する病気です。
甲状腺は、のどのあたりにある小さな臓器で、新陳代謝を活発にする『元気の出るホルモン』とも言われる甲状腺ホルモンを作っています。
甲状腺機能低下症の原因のほとんどは、甲状腺組織が壊されることによる原発性の甲状腺機能低下症です。
主に、免疫介在性のリンパ球性甲状腺炎と、特発性の甲状腺萎縮(原因不明)によって引き起こされます。
遺伝的要因の関与も考えられますが、明らかになっていない部分もあります。
ほかにも、甲状腺の非機能性腫瘍による正常な甲状腺組織の破壊、先天性の甲状腺機能低下症などもあります。
犬の甲状腺機能低下症の症状
甲状腺ホルモンは、全身の代謝を活性化する作用を持つため、その欠乏によってさまざまな症状が見られます。
犬においては、
といったさまざまな症状がみられることが多いです。
全身性の脱毛に加えて、鼻の上が脱毛することで気づかれることもよくあります。
甲状腺機能低下症による脱毛は、細菌感染や真菌感染などの脱毛とは違い、かゆみを伴わないことが特徴です。
また、ふらつきやナックリングが見られることもあり、『変な歩き方をしている』という稟告で来院されることもあります。
『最近、なんとなく以前と違う…』といった分かりにくい症状で発見されることもあります。
寒さに弱くなる、体温低下により、特に冬場に運動不耐性となることも多いです。
犬の甲状腺機能低下症の診断方法
犬の甲状腺機能低下症を診断をするためには、血液検査にて甲状腺ホルモンの測定を行います。
甲状腺ホルモンである、血中のサイロキシン(T₄)および遊離サイロキシン(fT₄)の測定をします。
血液検査では、多くの個体において、高コレステロール血症がみられます。
また、超音波検査によって、甲状腺の異常(萎縮、エコー源性の異常など)の有無も同時に調べます。
診断の際に注意すべき点としては『ユウサイロイドシック症候群』があります。
これは、甲状腺以外の疾患によって、血中の甲状腺ホルモン濃度が低下する病態です。
この場合、真の甲状腺機能低下症ではないために、誤診しないよう注意が必要です。
犬の甲状腺機能低下症の治療法
犬の甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンを補填することで治療します。
レボチロキシンナトリウム水和物20μg/kgを1日2回(動物用製剤の場合には、1日1回)、経口投与で行います。
臨床症状の改善した場合は、1日1回に変更をすることもあります。
治療開始後は、臨床症状の改善と合わせて、血中T₄濃度を測定することでモニタリングを行います。
採血は投薬から4~6時間後に測定することで、血中T₄濃度のピークにあわせることができます。
臨床症状が改善していれば、血中のT₄濃度が多少低かったとしても、投与量を増加する必要はない場合も多いです。
一般的に、治療によって改善がみられるまでの期間は、臨床兆候によって異なります。
すなわち、活動性は通常1週間以内に改善することが多く、高脂血症や貧血は数週間以内に改善すること傾向にあります。
皮膚症状の改善には数カ月を要することが多く、すぐに良化しないことに注意が必要です。
甲状腺腫瘍が原因の甲状腺機能低下症においては、外科的治療や放射線治療、化学療法などが行われることもあります。
これは、腫瘍や転移の状況によって判断されます。
食事に関しては、特に決まりはないですが、脂質の代謝が上手にできないため、なるべく低脂肪の食事を与えるようにしましょう。
また、キャベツやブロッコリーなどの『アブラナ科』に属する野菜はなるべく与えないようにしましょう。
というのも、アブラナ科の植物には『ゴイトロゲン』という成分が含まれており、これは甲状腺ホルモンの分泌を阻害すると言われているからです。
ただ、相当量を食さなければ影響はないと考えられますので、過度に心配する必要はありません。
犬の甲状腺機能低下症の寿命はどれくらい?
犬の甲状腺機能低下症は、適切な診断と治療によって予後が良好な疾患です。
ただし、生涯にわたる投薬が必要となります。
定期健診や血液検査も行うために、ある程度の費用がかかることも予想されます。
また、糖尿病やクッシング症候群といった併発疾患がある場合や、先天性甲状腺機能低下症の場合には、その原因や病態によって予後は様々となります。
犬の甲状腺機能低下症を予防するためには?
犬の甲状腺機能低下症を予防する方法はありません。
そのため、病気の早期発見が重要となります。
一般的に、犬の甲状腺機能低下症は中高齢でなることが多いため、5,6歳を過ぎたら、1年に一度は健康診断を受けるようにしましょう。
一般的に、甲状腺ホルモンは、外注検査(外の検査センターに検体を提出する)となるため、ルーチンの健康診断項目には含まれていないことが多いです。
どのような項目を検査するかは主治医の先生とご相談の上、決めるようにしましょう。
【まとめ】犬の甲状腺機能低下症の原因や症状、治療法について
犬の甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの欠乏により、元気や食欲がなくなる、脱毛などの皮膚症状が出る病気です。
血液検査で甲状腺ホルモンの値を測ることで診断ができます。
併発疾患があると、見かけ上甲状腺ホルモンが下がる『ユウサイロイドシック症候群』を引き起こすため、注意が必要です。
甲状腺機能低下症は、治療によって寿命を全うできる病気です。
今一度、愛犬の様子をチェックし、定期的な健康診断を受けるようにしましょう!